クオリアを具体例からわかりやすく解説します。
クオリアと言えば、脳科学者の茂木先生が本を書いたことで日本でも知られるようになりました。
具体例を通してクオリアを知ると、思考の幅が広がり、心の哲学の問題が身近なものになります。
クオリアとは
クオリアとは、主観的に経験される感覚のことです。(哲学用語事典 哲学用語図鑑)
私が体感する、痛いとか楽しいとか、主観的な「感じ」のことをいいます。
日本語訳では、感覚質です。
では、具体例を通してみていきます。
クオリアの具体例ー「百閒は一見にしかず」
有名なことわざ「百閒は一見にしかず」ですが、ことわざの意味は人から何度も聞くより、実際に一度、自分の目で見るほうが確かであることです。
ことわざからクオリアを見ていきます。

僕はゾウが好き!

動物園にいるかな。行く前に知識をつけておこうか。
よく聞いててね。

ゾウは鼻が長くて、大きくて、灰色っぽい肌。

じゃあ動物園に行くよー!
はい、これがゾウだよ!

わっ!!
このとき感じた主観的に経験される感覚がクオリアになります。
100回聞いた時よりも、実際に体感したときの感じ方は違うものになります。
ここでは印象的なクオリアを説明しました。
しかし、ここで物理主義者はこういいだします。

子どもは親が言うことをそのまま受け取っていて、何か新しい事は何も得ていないかもしれない。
例えば、「わっ!!」の続きを説明してと子どもに言ったら、100回聞いたことのある言葉を思い出しながら、その中の言葉を言うかもしれません。

わっ!!大きい!怖い!灰色!鼻が長い!
新しいことが何もなかったとすると、クオリアの存在は否定されます。
物理主義は、心は物質的に解明できるとする立場です。
心も脳の働きと関係している物質だと言います。
この「一見は百閒にしかず」の例題だけだと、他の要素がたくさんでてきてしまい、クオリアの存在があやふやになってしまいました。
では、クオリアの存在だけを際立たせる思考実験を見ていきましょう。
フランク・ジャクソン(1943~)によって説かれた思考実験「マリーの部屋」です。
クオリアの具体例ー「マリーの部屋」

私は科学者マリー。
白黒の部屋に閉じ込められていて、そこで世界のすべての勉強をしているの。

すべて?

色についても完ぺきに説明できるよ。
物理的な事実も全部知ってるし、部屋にはモニターがあるの。

でも、閉じ込められてるのはかわいそう。
私が出してあげる!それ!

あっ、色のある世界!!
ここでマリーは初めて色のある世界を体験しました。
物理学に基づく説明はすべて熟知しているマリーです。
マリーは色についての知識をすべて知っているので、自分の知識と結びつけて現象を説明できます。
しかし、知識だけでは説明できない何か新しいものをマリーは知りました。
この「感じ」がクオリアです。
科学者マリーが物理学の言葉だけでは説明できない意識を、クオリアという言葉によって説明しました。
ここでの出来事は、クオリアという言葉を使ってしか言い表せません。
この思考実験において、クオリアという言葉の重要性が見いだされました。
ちなみに、主観的というと観念論を思い出しますね。
観念論に興味を持った方はこちら。
>>観念論とはー子どもと一緒に絵本で哲学しよう。
クオリアとはー心の哲学におけるキーワード
クオリアは、心の哲学におけるキーワードの一つです。
ディヴィッド・チャーマーズ(1966~)はクオリアを使って、哲学的ゾンビという思考実験をしました。
哲学ゾンビとは、外見的には普通の人間とまったく同じですが、クオリアをもっていない人間のことです。
具体例で見ていきます。

僕はクオリアをもっていないんだ。

好青年だね!

照れるな。君こそ感じがいいね!

私も照れるね。じゃあ、・・わっ!!

びっくりした。急にどうしたの?

ほんとにクオリアがないのか分からない。
クオリアがなくても、見た目や行動は私たちとまったく変わらずにいられます。
具体例では男性の方を哲学ゾンビにしましたが、女性であっても哲学ゾンビの可能性は否定できません。
ブログを読んでいるあなた以外はみんな哲学ゾンビの可能性があるということです。
しかし、哲学ゾンビは明らかに人間とは違うと私たちは感じます。
チャーマーズはゾンビが持たないこのクオリアのことを、心と表します。
心という非物質がこの世界に存在すると言います。
こうしてチャーマーズは、なんでも物理的な性質に還元できるとする物理主義を批判する根拠に、クオリアを唱えました。
そして、このクオリア研究は脳科学でも進められています。
クオリアが解明されていくと、もっと高度なAIが誕生します。
クオリアとはーまとめ
クオリア(感覚質)とは、主観的に経験される感覚のことです。
私が体感する、痛いとか楽しいとか、主観的な「感じ」のことをいいます。
思考実験「マリーの部屋」からクオリアでしか言い表せない出来事を説明しました。
物理主義を批判する思考実験「哲学ゾンビ」もクオリアを使って説明しました。
クオリアは、心の哲学にかかせないキーワードの一つです。
脳科学でも研究されているテーマの一つでもあります。

クオリアには思考実験がたくさんあって面白い!
コメント