ネオプラグマティズムを具体的に解説ープラグマティズムとの関係

ネオプラグマティズム哲学

科学とは何かを以前に解説しました。
>>科学とはー哲学から科学哲学を具体例を通して考える

その中で、哲学が真理としていたことが、科学の発見によって変わったと話しました。
そして、まだまだ解明が求められる問題があるので、真理は変わる可能性があります。

その結果、何が真理なのかわからない!

そんな中、ある理論がシステム全体にとって有用なら、それを採用しておこう。

そう考えたのがネオプラグマティズムです。
では、詳しく見ていきましょう。

ネオプラグマティズムとは

ネオプラグマティズムとは、プラグマティズムが取り扱っていた思想を、20世紀になって再構築して考えた理論です。
真理がわからないので、その理論や命題がシステム全体に有用ならば採用します

詳しく見ていきましょう。
まずは見えなくて実証できないものに対して。

おじいさん
 

電子は見えないから、あるかないかわからない。

あると考えておいた方が有用だね!

本当に実在するかしないかの議論はあるのですが、有用かどうかで採用します。
次に、今の科学で認められている説。

おじいさん
 

地動説や相対性理論も?

真理はないとされていても、あると考えることでそれに合わせて議論も発明もできるね。

大発見に敬意の意を示したいところですが、有用だから採用します。
次に、科学的に認められている実験心理学

おじいさん
 

心理学実験でこの説が実証された!

それって、活用するとビジネスで上手くいったり、人間関係がスムーズになる!

今のビジネスや教育では、心理学を知っておくと役に立ちます。
好感度が上がるにはどうしたらいいか。
人にこういう行動をとってもらうにはどうしたらいいか。
そういったことを知ることは、有用だということは実感しやすいです。

心理学の基礎を哲学と関連して学ぶのにおすすめの本はこちら
>>図解 心理学用語大全(2020年)

理論や命題に対して、それが有用か有用でないかで採用します。
実験心理学はプラグマティズムを唱えたデューイが創始者です。(後述)
ネオプラグマティズムでは、実験の結果よりは言語に関心をよせます。

ここでは、科学哲学の流れで見てきました。
なので、科学は役立たせなくちゃ!という主張であるとおきかえられます。

有用か無用かはわかったとしても、どうしてプラグマティズムと違うのか。
ネオプラグマティズムを語るにおいて、プラグマティズムとの関係をみていきます。

ネオプラグマティズムとプラグマティズム

プラグマティズムが取り扱っていた思想を、20世紀になって再構築して考えた理論がネオプラグマティズムです
まずは、プラグマティズムを見ていきましょう。

プラグマティズムとは

プラグマティズムとは、知識とは行動の結果予測のことであり、なおかつその知識が人間にとって有用であれば真理であるとみなす立場です。(続哲学用語図鑑 参照)
19世紀中頃に、パース、ジェイムス、デューイによって唱えられました。

この「知識とは行動の結果予測」を詳しくみていきます。

パースの見解から知識を見ていく。

プラグマティズムの創始者チャールズ・サンダース・パース(1839~1914~)の見解を見ていきます。

僕はテレビを知ってる。

テレビって何?

ボタンを押すと、好きなアニメが出てくるの!
たたくと壊れちゃうよ。
薄っぺらくて、黒いの。

薄っぺらくて、黒いのは何からできているからかな?

えっ、機械の中身は知らないよ。

テレビそのものではないけど、どう使えばいいのかわかる。
使い方がわかるってことで、君はテレビを知っているね。

テレビが何から出来ているとか、テレビの形などの「テレビそのもの」を知っているわけではありません。

そのものは知らなくても、テレビにある行動をするとテレビはそのようになることを知っています。

行動の予測した結果がわかるということが、知識だとパースは考えました
こう考えると、知識は検証可能になります。

テレビのボタンを押す⇨テレビがつく。(検証可能)
テレビを叩く⇨テレビが壊れるか、直る。(検証可能)

このように、知っているものに何かをすると、こうなるだろうと予測できます。
この考えの中でパースは、知識がみんなに共有されたものが真理だとしました

真理は実験や観測によって生み出されるものだと考えます
この考えを発展させたのがジェームズです。

ジェームズの実用主義

ウィリアム・ジェームズ(1842~1910)はパースと同じクラブで活動をしていました。
ジェームズは、ある知識から行動した結果が有用であればそれは真理だと言います

ここでネオプラグマティズムと同じく、有用という言葉が出てきました。
ジェームズは『プラグマティズム』の著者です。
パースの思想を継承してプラグマティズムを確立しました。

ジェームズにとっては、真理が事実であるかどうかは問題ではありません。
真理とは、私にとっての真理です
行動した私にとって、役に立つならそれを真理とみなします。

私には神様が必要だ!⇨真理
私には本が必要だ!⇨真理
私が痩せるにはこうしたらいい!⇨真理

私が知識から行動した結果が有用であれば、それは私にとって真理になります

その人にとってその信念は真理になりますので、真理はたくさんあります。
このようなプラグマティズムは実用主義と訳されます。

なお、ジェームズはアメリカ実験心理学の創始者でもあります。(心理学用語大全

次にその考えを発展させたデューイをみていきます。

デューイの道具主義

ジョン・デューイ(1859~1952)を見ていきましょう。
デューイは私にとって有用な真理とは何かを考えていきます。

デューイの真理は日々の生活と結びついていました。
頭の中だけの考えであって、日々の生活に役立たないものは、真理ではありません

例えば、本で消火器の使い方を読んだとします。
けれど、火事になったとき実際に使えなければ火が燃え広がります。

例えば、荒野で竜巻が襲ってきたとします。
どうにかする知識を本で読んでも、それが使えなければ死んでしまうかもしれません。

プラグマティズムは荒野を開拓してきた伝統的なアメリカのフロンティア精神に基づいていると言われています。
知識が使えなければ、生き延びることが難しくなります。

消火器を道具とみるのと同じく、知識を道具だとデューイは見ます。
道具というのは、そのものに価値があるのではなく、使った結果の有用性に価値があります

人間は困難を回避するために道具という知識を使う。
知識を役立つ道具であるとする立場を、プラグマティズムの中で道具主義と言います

三人の言う共通点をまとめる。

では、三人の言っていることの共通点を浮かび上がらせます。
プラグマティズムとは、知識とは行動の結果予測のことであり、なおかつその知識が人間にとって有用であれば真理であるとみなす立場です

経験の結果により、物事の真理を判断する哲学的態度とまとめることができます。

ネオプラグマティズム登場の理由

続けて、ネオプラグマティズムの登場の理由をみていきます。
プラグマティズム登場の理由と関連させてみていきます。

プラグマティズムが登場した理由

プラグマティズムでは、経験の結果によって真理を判断しました。
経験の結果によって知識を真理だとするには、根拠が必要なことを示しています。

創始者パースは今までの真理の成り立ちに批判をしました。
なんでも根本から問い直すデカルトの懐疑論のように、初めの原理を追求していく真理の求め方を批判したのです。

真理の根拠を理性に求めて、頭の中で議論する論理は役に立たないとします
根本にさかのぼると、神という絶対的存在を持ち出さなくてはいけなくなります。
>>デカルトの懐疑論はこちら

なので、パースは実験の結果が知識として共有されれば真理にしようと考えました
この見解がプラグマティズムの出発点になります。

ネオプラグマティズムの登場

ところが、これと同じような根拠によって、プラグマティズムも批判されます
実験を確かめるための実験、その実験が確かなことを確かめるための実験、またその実験が確かなことを確かめるための実験、・・・。
この無限後退がずっと続くのではないかと、ローティは考えました。

リチャード・ローティ(1931~2007)の主張を特にネオプラグマティズムといいます。

知識を基礎づける究極の真理などない
このようにローティは主張しました。

プラグマティズムでは、真理を実験や観測などの経験に頼っていました。
しかし、ネオプラグマティズムではそれを批判します。

では、ネオプラグマティズムは真理をどのように見たのでしょうか。

ネオプラグマティズムにおける真理

ローティは、目の前に山積みにされた問題を改善するために、私たちみんなでつくり上げていく物語こそが真理だと述べます

詳しく見ていきます。

男女平等って当たり前だよね。

うーん、当たり前なのかな。

僕が当たり前だと思っていることは、世界にとっては常識じゃないかもしれない?

地域によっては違うよ。
でも、男女平等とか、貧困をなくすとか実現させたいよね。

うん。みんながいいと思ってることが実現に向かうといいな。
それを真理にしたらいいんじゃない?

そうだね!哲学者に女性が少ないでしょ?
ネオプラグマティズムを継承する女性哲学者たちがいるんだよ。

ネオプラグマティズムはよりよい世界を作るための共通の知識を真理とします
差別や虐待、貧困や環境問題。
山積みにされた問題を改善する物語を必要としています。

「実験や観測によって真理だと言うことは、自分の思考や行動を制限する。
そんなことは、強迫観念でしかない!」とローティは語ります。

これにより、ネオプラグマティズムでは大幅に扱えるものが増えました。

知識を経験によって基礎づけるのではなく、私たちが作り上げていくことをネオプラグマティズム反基礎づけ主義と言います

同じく何が真理なのかわからないと主張する新科学哲学との違いは、ここを意識すると明確になります。

新科学哲学では、何か良いのか悪いのかも相対的に見ます。
例えば、未開の地で男尊女卑があったとしても、その知識の基盤が違うとします。
差別がある国とない国との優劣をつけません。

ネオプラグマティズムは論理学とさらに繋がる

ネオプラグマティズムは真理をみんなで作るので、言語に重点を置きます。
分析哲学では曖昧な言語を調べる日常言語学派と厳格な言語の人工言語学派に分かれていたのですが、その二つがネオプラグマティズムでは繋がりました。

ちなみに、日常言語を分析したジョン・L・オースティン(1911~1960)の著書『言語と行為』では、発言はすべて行為遂行だと考えるようです。
この考えを取り入れると、「言葉は世界を作る」ことになります。

プラグマティズムでは、知識とは行動(行為)の結果予測でした。
しかし、言語は事実を描写するだけではなく、事実を変化させると考えます。
ここで、言語と行為が結びつきました。
ネオプラグマティズムの「みんなで作り上げていく物語が真理」というローティの主張に影響を与えています。

ネオプラグマティズムまとめ

ネオプラグマティズムとは、プラグマティズムが取り扱っていた思想を、20世紀になって再構築して考えた理論です。
従来の方法では真理が定まらないので、その理論や命題がシステム全体に有用ならば真理とします

ネオプラグマティズムを語るにあたって、プラグマティズムをみていきました。

プラグマティズムとは、知識は行動の結果予測のことであり、なおかつその知識が人間にとって有用であれば真理であるとみなす立場です
19世紀中頃に、パース、ジェイムス、デューイによって唱えられました。

その知識とは行動の結果という真理の捉え方を批判するように、ネオプラグマティズムは登場しました
有用であれば真理とみなす立場は一致しています。

ネオプラグマティズムを代表するローティは、私たちみんなでつくり上げていく物語こそが真理だと述べます

言語に焦点を当てることによって、日常言語学派と繋がりました。

物語こそが真理って、いろいろと想像をかきたてるね。

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