クワインの「翻訳の不確定性」を具体例で紹介。

クワイン哲学

クワインの「翻訳の不確定性」とは、言語を翻訳する場合に、正しい翻訳が定まらないことを言います。(続・哲学用語図鑑 参照)

これを知ると、コミュニケーションでのトラブルが減ります。

言葉そのものに興味を持つようになるからです。

では、見ていきましょう。

クワインの「翻訳の不確定性」とは

ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン(1908~2000)はアメリカの哲学者です。

クワインは「翻訳の不確定性」を唱えました。

翻訳の不確定性」とは、言語を翻訳する場合に、正しい翻訳が定まらないことを言います

例えば、翻訳家がまったく知らない土地に来たとします。

そこで現地の人がウサギをさして「ガヴァガイ」といいました。

ここで、翻訳者はウサギのことがガヴァガイなのだと定めます。

ウサギ=ガヴァガイ

しかし、問題が起こります。

現地の人がウサギを拝み始めたのです。

翻訳者は今までウサギをペットだと思っていました。

ペットならば拝みはしません。

きっと別の意味があるに違いないと翻訳者はガヴァガイをさらに見ていくことにしました。

ジャンプ・白さ・猫などを指して現地の人にガヴァガイかどうかを聞いてみると、違うといいます。

翻訳者が崇拝している太陽を指してみました

すると、現地の人は頷きました。

ガヴァガイ≠ジャンプ・白さ・猫
ガヴァガイ=神、ウサギ

翻訳者はガヴァガイの訳を①「神」②「ウサギ」としました。

ここでは翻訳者が、太陽を神だと思っている自分の主観を入れています。

人が違えば、ガヴァガイはここでも異なった意味を持ちます。

ガヴァガイ=太陽、ウサギ

現地の人が太陽を崇拝しているとは限らないからです。

現地の人にガヴァガイの対象を指すと正解だと言ってくれるので、翻訳は正しいように思えます。

このように、一つの語から意味がたくさん出てきて、捉えられないことが「翻訳の不確定性」です。

他の語でも、実際に辞書をひくといくつかの意味が載っていますね。

例えば、「世界」を広辞苑で引くと8つの意味がでてきます。

辞書が改変されることもあります。

翻訳には確定された一つの正解がないので、いくつでも意味を作れることを表します

あれとって。

指している方向には8つのモノがあるよ!?

このように考えると、現地の人と翻訳者だけでなく、民族が同じでも意味のすれ違いが起こります

「翻訳の不確定性」は同じ言葉を話す私たちの中にもあるのです。

つまり、自分と他者の間で、言葉が指示する範囲が一致しないことを表します

クワインの「翻訳の不確定性」を取り上げる理由

クワインの「翻訳の不確定性」は言語が一緒でも起こります

辞書での違いを見てきましたが、日常会話での違いを見ていきましょう。

例えば、子どもが「水」と言ったとします。

喉が渇いたのでお水を飲みたくて「水」と言ったのかもしれません。

水たまりがあって濡れないように「水」という場合、水という漢字が書けたので「水」と言ったのかもしれません。

この場合、辞書での「水」とは意味が違ってきます。

コミュニケーションでのすれ違いが起こります。

水!!

その後の言葉を言わないと、わからないからね。

このようなすれ違いです。

意味理解を深めたい対話でも、このようなことが起こってしまいます。

相手が言葉の意味を固定化してしまった場合、話が合わなくなるからです。

例えば、

①哲学=思想

②哲学≠思想

実は、哲学も辞書には2つの異なる意味がのっています。

議論する場合には、意味の違いを決める必要があるのです。

お互いが①の意味、②の意味を主張し続けて受け入れないとしたら、議論は平行線をたどります。

さらに、今見直しておきたい理由をデジタル化から見ていきましょう。

現代のデジタル化が進んできた背景から問題にせまります。

クワインの「翻訳の不確定性」現代での具体例

クワインの「翻訳の不確定性」を現代のデジタル化問題から具体的に見ていきます。

今回、参考にしたのは「デジタルで読む脳×紙の本で読む脳」(メアリアン・ウルフ著 2020)

筆者はデジタルで読む場合と、紙の本で読む場合をわけて考えました。

デジタルメディア
・斜め読み、飛ばし読みで速く読める。
・文章の細部を把握しにくい。
・記憶の順序づけに混乱が起こる。
・多読できる。

文章を物理空間で認識しにくいことから、このような欠点・利点が起こりやすいことを述べていました。

対比として、紙の本の場合をあげます。

紙の本
・読みが遅め。
・物理的な空間認識ができる。
・細部を把握しやすい。

実際に触りながら読めるので、その場合の欠点・利点です。

人によって違いますが、そのような傾向があると捉えて下さい。

現代はデジタル化が進んでいます。

それに合わせて、人が文章を速読したり、文章を「見る」ようになりました。

読む場合と違って、見る場合は単語の意味を一つ一つ吟味する機会が減っていきます

筆者がどの文脈からその言葉を使っているのか、その言葉にどんな意味を持たせているのかが捉えにくくなります。

無意識に多読を進めていく場合、「翻訳の不確定性」を意識しておかないと、筆者の伝えたかったことを読み取れない場合がでてくるのです。

自分の言葉の意味で解釈してしまいます。

一概だけでは言えませんが、最近の学力低下の問題にもつながってくる話です。

かわいい!

「かわいい」こそ、文脈で捉えたい言葉だね。

筆者の伝えたいことを把握するのに「翻訳の不確定性」を知ることは役に立ちます。

クワインの「翻訳の不確定性」まとめ

クワインの「翻訳の不確定性」とは、言語を翻訳する場合に、正しい翻訳が定まらないことを言います

これを拡大解釈していけば、自分と他者の間で、言葉が指示する範囲が一致しないことを表します

「翻訳の不確定性」を知ることで、相手が意味する言葉に興味を持つことができます。

デジタル化が進む現代、文を「見る」ようになった私たちは、言葉を自分の意味で捉えやすくなっています。

同じ本を読み返すたびに発見があるのは、翻訳の不確定性があるからかな。

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